自閉症の特性に合わせたTEACCHプログラム

自閉症の人が安定して課題に取り組むためには、自閉症の障害特性と個人の状況について支援者が正しく理解し、困難さへの配慮をすることが重要です。自閉症の人たちの困難さをまとめると、次のようになります。

 1 社会的な関係性やルールが理解しがたい。   
   指導や注意ばかり受けることがストレス要因となる。
 2 コミュニケーションが上手にできない。
   相手の意図が理解できなくなって困ってしまう。
   自分の意図が伝わらなくて困ってしまう。
 3 自分を時間と空間の中に位置づけることが難しい。
   見通しが持てないことが不安につながる。
 4 感覚入力がコントロールできずに混乱してしまう。
   何が苦手か、何がわからないのか、何に困っているのかが分からないことが不安やストレスの要因となっている。

つまり、社会的な関係を結んだり維持することが難しく、特に言語の社会的関係での使用が困難です。そして、概念形成や抽象的な思考の理解が難しく、学習した行動を新しい場面に一般化・応用することも苦手という特性です。

そんな自閉症の特性を理解したうえで役に立つのが、米国ノースカロライナ大学の故エリック・ショプラー博士が創設したティー=TEACCH(Treatment and Education of Autistic and related Communication-handicapped Children) という手法です。

ティーチの特長は、利用者さんへのアプローチの方法にあります。なかでも「構造化」と呼ばれる手法が根幹になります。障害の重い利用者さんほど、自分が今、何をすればよいのかわからなくなることが多く、不安に襲われて混乱します。自閉症の利用者さんにとって、自由ほどつらいものはない、という視点から組み立てるのが「構造化」です。

まず、場所を「構造化」します。生活の場において、ここは作業をする場所(ワークエリア)、ここは遊ぶ場所(プレイエリア)といったように、ついたてを置いたり、カーペットの色を変えたりして、視覚的に明確に場所の意味を理解できる環境を創ります。

次に、時間を「構造化」します。自閉症の利用者さんは予期しないことに直面すると不安を抱きます。一つひとつの行動を文字や絵で1枚1枚のカードに表し、利用者さん一人ひとりに合わせた時間割表にそのカードを貼り付け、壁などに掲げます。利用者さんは、時間がきたらカードを1枚手に取り、構造化された場所に移動して作業などに取り組みます。

自閉症のみなさんの「視覚優位」の特性を存分に活かした支援となっています。興味がある方は詳しく調べてみていただけたらと思います。